アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が鼻の粘膜に接触する事で起こる鼻炎の一種です。スギ花粉などによって引き起こされる季節性アレルギー性鼻炎と、ダニやハウスダストなどによって引き起こされる通年性アレルギー性鼻炎がありますが、どちらも併存する事もしばしばあります。これまでアレルギー性鼻炎は主に成人や思春期以降の子どもに見られる事が多かったのですが、最近では幼児や小児においても増加傾向が報告されています。アレルギー性鼻炎の患者様の25%程度に喘息の合併があり、気管支喘息の患者様の約70%にアレルギー性鼻炎が合併するといわれています。アレルギー性鼻炎の症状が悪化すると喘息もひどくなるケースが多く、アレルギー性鼻炎と喘息を合わせて治療する事が重要です。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患も合併しやすくなるといわれています。
毎年、スギ花粉の飛散期に、くしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状が認められ、時として目のかゆみなどを伴う場合、スギ花粉症が疑われます。鼻の粘膜は蒼白に腫脹しますので専門医が診察すれば容易に診断できます。さらに採血検査(特異的IgE検査)の結果を組み合わせて診断します。
一年中鼻の症状(くしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまり)を繰り返し、目のかゆみなどの眼症状、咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などの喘息症状などを伴う場合、ダニやハウスダストによるアレルギー性鼻炎の可能性が考えられます。鼻の粘膜は蒼白に腫脹して透明な鼻水が多いので専門医が診察すれば容易に診断がつきます。これらの所見に加えて採血検査(特異的 IgE検査)の結果を組み合わせて診断します。
一般的な治療法で、飲み薬と点鼻薬を併用する事で効果が出ます。
鼻水を抑える抗ヒスタミン薬や鼻詰まりに効果のあるロイコトリエン受容体拮抗薬などの内服薬、鼻の炎症を抑える点鼻ステロイド薬などを用います。
症状・薬に対する眠気や倦怠感の副作用・運転等の業務やライフスタイルに合わせて処方を行われています。
近年は眠気の出にくい第二世代の抗ヒスタミン薬がよく使われます。
この治療は鼻の壁の中でも最も大きい下鼻甲介粘膜の表面をCO2レーザーで薄く焼く事で、花粉やホコリなどが粘膜についたとしてもアレルギー症状を起きにくくします。この治療は従来の手術的粘膜切除や薬物による粘膜焼灼に比べ、出血や痛みが軽減されており、比較的安全性が高く、短時間で済みますので、日帰り手術が可能です。手軽な治療ですが効果は1~2年です。
アレルゲン免疫療法は、アレルゲン※1を低濃度から体内に取り込み、徐々に濃度を上げていき、慣れさせる事で体質改善を目指す治療法です。薬物治療(対症療法)とは異なり、根本的にアレルギーを治療する方法として注目されています。従来は注射による皮下に定期的に注射する減感作療法が行われていましたが、アナフィラキシー※2などの副反応、頻回な通院、そして毎回注射の痛みも伴います。そこで約10年前から舌の下に治療薬を投与する舌下免疫療法が行われるようになりました。これにより、ご自宅での服薬で免疫療法が行えるようになりました。
舌下免疫療法は1980年代に海外で開始された治療法で、日本では2014年にスギ花粉症で初めて保険適用となり、翌年の2015年には、ダニを原因とする通年性アレルギー性鼻炎も保険適用となりました。このため現時点での日本における舌下免疫療法の適応は、スギ花粉またはダニが原因となるアレルギー性鼻炎と診断された方で、薬物療法でアレルギー性鼻炎の症状やQOL(生活の質)を十分にコントロールできない方、あるいは、アレルギー性鼻炎の臨床的寛解※3をご希望される方、となっています。
一方、重症喘息などを合併する方は受けられず、高血圧(ベータ遮断薬)を服用している方、治療開始時に妊娠している方も控えるべきとされています。
※1 アレルゲン:アレルギーを起こす物質
※2 アナフィラキシー:医薬品などに対する急性の過敏反応で、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状、突然のショック症状(蒼白、意識の混濁など)がみられる病態
※3 臨床的寛解:炎症によって引き起こされる疾患の症状や徴候がまったくない事
治療は3~5年継続する必要があります。長期間かけて体をアレルゲンに慣らし、免疫力を高め体質を改善する治療とお考えください。
スギ花粉症では、治療を開始してはじめて迎えるスギ花粉飛散のシーズンから、ダニアレルギー性鼻炎では、治療を開始して数ヶ月後から効果が期待できます。年単位の治療継続で最大の効果が得られると考えられています。
※ただし、すべての患者様に同様の効果が期待できるわけではない事をご了承ください。
1日1回、少量の治療薬から服用をはじめ、増量期を経て、決められた一定量を数年間継続して頂きます。初日の服用は、当クリニックで医師の監督のもと行い、2日目からはご自宅で服用頂きます。基本的に、1ヶ月に1回受診頂き、副作用や治療効果などを確認させて頂きます。
治療薬を舌の下に置き、薬ごとに定められた時間を経過した後に飲み込みます。
その後5分間は、うがい、飲食を控えます。また、運動や入浴は2時間程度避けるようにします。
スギ花粉症の場合、スギ花粉の飛散時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっているため、新たに治療をはじめる事はできません。花粉飛散が終わる6月以降から治療を開始できます。一方、ダニアレルギー性鼻炎の場合は、時期に関わらず治療をはじめる事ができます。
スギ花粉とダニの両方に対してアレルギーがある方は、治療は並行して可能ですが、同時に開始する事はできません。まず、どちらかを開始して、症状が安定してからもう一方の治療を開始します。いずれの場合におきましても、適切な開始時期を提案させて頂きます。
スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎の治療対象年齢は、いずれも5歳以上です。
長期にわたりアレルギー性鼻炎の症状を抑える効果が期待できます。症状が完全に抑えられない場合でも、症状を緩和し、アレルギー治療薬の減量が期待できます。
舌下免疫療法では重篤な副作用が発生する事は稀とされており、軽微な症状としては、次のようなものが報告されています。ほとんどが一時的なものですが、もしこのような症状が出現し、治まらない場合はすぐに受診してください。
重度のスギ花粉症に対して、抗IgE抗体オマリズマブを皮下注射する治療が保険適応になりました。スギ花粉症によるくしゃみ、鼻水が止まらない、鼻詰まりがひどいといった鼻炎症状が従来の薬物療法を行ってもおさまらず1日中鼻をかむ、薬によって眠気が強く日常生活や仕事に支障が出るという患者様に向けての治療法です。高価な薬を使用する治療のため厳格に適応が決められています。
治療にあたっては、以下の条件を満たす事が必要です。
※注意:一部のクリニックでは花粉症の治療としてケナコルト(長期に作用するステロイド剤)の注射を行っているところがあるかもしれませんが、ケナコルト注射は重篤な副作用(出血性胃潰瘍、結核などの重篤な感染症)のリスクがあるほか注射部位の筋肉の萎縮や皮膚の色素沈着・アナフィラキシーショックがあるため耳鼻咽喉科学会では花粉症での使用は避けるべきとされています。当クリニックもその趣旨からステロイド注射(ケナコルト)はおこなっておりません。